アルゼンチンのぶどう畑で人生の短さについて語り合う。
06〜10/MAR/2015 in Tunuyan
今日もぶどう畑の中にあるアンドレスの家で目覚めた朝。
下の階に降りて朝ご飯を食べているとアンドレスが起きて来ました。
「昨日は夜更かししちゃったんだよ。」
本が面白かったから朝の3時か4時ぐらいまで読んでたんだって。
時間を自由に使えるっていいなぁ。
ご飯の後はアンドレスと一緒に犬の餌やりに行ったら、突然雨が降って来てずぶ濡れになりました。
この季節は月に2回ぐらいしか降らないらしいのに、もうここに来てから2回雨が降った。
先週もたくさん降ったみたいだから、今年は異常気象なんだ。
水が多過ぎるとぶどうの糖分が減って良いワインができにくくなるそうです。
ワインの量は多い年で700ℓ、少ない年で200ℓ。
自然相手だから、なかなか安定して収穫するのは難しいみたいです。
雨はひとしきり降ったらやんだので、今日もぶどう畑でお手伝いです。
2週間後のハーベストに向けて、トラクターが通れるように道に伸びたツタをよける作業。
家の近くのぶどうの木から順番に、伸びすぎて地面まで落ちているツタを上の方の棒にからめていきます。
これ、始めは簡単だと思ったけどめっちゃ大変だった!
ぶどう畑が広すぎていつまで経っても終わらない!!
炎天下の中はたらき続けて、2時間もかかりました。
めっちゃ暑かった!!
仕事が終わったら疲れたので昼寝をする事に。
そして夕方ぐらいに起きたら、アンドレスも寝てしまっているみたい。
ご飯を作って夜まで待ちましたが、結局アンドレスは次の日の朝まで起きてきませんでした。
今日は体調が悪かったみたいです。
次の日。
朝起きるとアンドレスがいなかったので畑を探してみると、誰かと一緒に作業をしていました。
もう体調はよくなったみたいです。
近くまで行ってみると、共同でぶどう畑を運営しているホルヘが来ていました。
アンドレスはこの畑で、アルゼンチン人のパートナー、ホルヘと一緒に働いています。
「そういえばホルヘとは会った事なかったね。今日は月曜日だから仕事なんだよ。」
アンドレスに言われて気付いたけど、昨日まで週末だったんだ。
南米に来てからはもうすっかり曜日の感覚がなくなってしまいました。笑
「今日は何か手伝える事はない?」と聞いてみると、「じゃあ朝ご飯を食べたら外に出て来て。」
と言われたので、朝ご飯を食べてからアンドレスと一緒に作業。
愛犬たちはみんなアンドレスに着いて来ます。
今日のお仕事はアリ退治。
畑には何種類かアリがいるんだけど、一種類だけぶどう畑に侵略して来るアリがいるそう。
アンドレスにアリの巣を探し方を教えてもらいます。
まずは雑草の中にアリの通り道を探します。
その通り道を見てみると、アリたちがせっせと荷物を運んでいます。
あとはこの行列をひたすら追いかけて巣を突き止めて、アリを退治する薬を巣の近くにばらまくだけ。
アリはこの薬を食べ物だと思って巣に持ち帰り、巣の中で全滅するそうです。
「じゃあ、あとは同じようにやればいいから。」
そう言ってアンドレスは別の仕事をしに戻って行きました。
それからはひたすらアリ探し。
広い畑だからアリの行列を見つけるだけでも大変です。
それからアリを探す事3時間ぐらい。
ひたすら下を見ながら畑を歩き回って、全部で11個のアリの巣を発見。
それをアンドレスに報告したら、「ええっ、11個も見つけたの?!」「すごいね!!」と、またしてもオーバーすぎるぐらい褒めちぎってくれました。笑
一仕事終えた後はシャワーを浴びてのんびり。
マテを飲みながら耳を澄ましてみると、聞こえるのは虫の声と木々のざわめき。
周りには畑しかない静かな場所でぶどうを育ててワインを作りながら送るシンプルな暮らし。
こんな生き方もあるんだなぁ。
午後。
突然家の水が出なくなったので、アンドレスとホルヘは原因を突き止めるために大忙し。
ポンプや電気系統を一つ一つ確認して、夕方ぐらいになってようやく原因が分かりました。
配管が劣化して水が漏れていたんだそう。
修理するには地面に埋まっている配管を掘り起こして交換しないといけません。
でも作業が大変で終わらなかったので、また明日に持ち越しになりました。
ホルヘが帰ったあと。
アンドレスが窓の外を眺めながら携帯をいじって、どうも落ち着かない様子。
「今日はぶどうを買い取ってもらうんだ。」
アンドレスが育てたぶどうを大手のワイン製造会社が買い取ってくれる事になったそうです。
そして、その業者は今朝9時に来るって行ってたのに、30分遅れ、1時間遅れ。
何度電話してもやって来ないそう。
「1時間後に行くから。」
そう言われ続けてもう夕方の6時。笑
さらに、さっきまた電話があって「あと1分で行くから!」と電話があったけど全然来なくて、ようやく来たのは電話から30分後。
アンドレスも大変だなぁ…。
そういえば昨日の肉屋の店員もかなり時間にルーズだった。
それにアンドレスの家のインターネットが調子が悪くて、その修理の人も今日来るって言ってたのに急に来れなくなったらしい。
「車が壊れたから行けない。」という言い訳をされたみたい…。
あと、今日水が出なくなる前にも水道ポンプが故障して修理を依頼していたそうですが、その修理業者の人に至っては、3ヶ月前に来る予定だったのにまだ来ないらしい…。
今は予備のポンプで代用しているみたいだけど、もしそれも壊れたら完全に水がでなくなる。
そんな大変な状況なのに3ヶ月も来ないなんて信じられないなぁ。
今日もよるご飯を作って3人で食べます。
穏やかに見える田舎暮らしですが、田舎暮らしならではの苦労もあります。
業者の人たちが時間通りになかなか来てくれないのもそうですが、近所付き合いも難しいみたい。
今のお隣さんが変わった人で、お金があまりなくて水道代を払えなかったからアンドレスは水を融通してあげていたそう。
でも、そうやって親切にしていたのに、ある日起きてみると植えたばかりの植物が全部食い荒らされていた。
原因は隣の家のヤギ。
その後も何度も被害に遭ったので、電気ワイヤーを作ってヤギが来れないようにしました。
でもさらに、お隣さんはワイヤーを切って、またヤギをアンドレスの農地に放ったそう。
そして、ついに堪忍袋の緒が切れたアンドレスの当時のパートナーは、畑にやってきたヤギに腹を立てて一匹殺してしまいました。
アンドレスはパートナーに殺したヤギを見せられてビックリし、迷った末に肉屋に持って行って丸焼きにしてもらいました。
そして、お隣さんに「ごめん、殺しちゃった。」と言って丸焼きにしたヤギをお詫び(?)に持っていくと、お隣さんはブチ切れて裁判沙汰になってしまったそう。笑
今はもう裁判も終わってお隣さんも大人しくなったみたいだけど、田舎暮らしも大変です。
あとは、アンドレスと最初に出会った夜にも話した人生の短さについても話してくれました。
「40ぐらいになってようやく気付いたんだ。
人生は本当に大切だと思う事をしてすごさないと、あっという間に終わってしまう。」
アンドレスはかつての奥さんと一緒に豊かな暮らしをする為に必死で働いた。
でも、働き詰めの生活の中で奥さんとの間にだんだんと距離が出来てきて、離婚しちゃったそう。
「ものを消費するだけの生活をしていても幸福にはなれない。
この年になってようやく気付いて、今の暮らしをしている。満足しているよ。
あとは良い奥さんが見つかれば完璧なんだけどなぁ。」
アンドレスは少し悲しそうな目をしながら笑っていました。
だいごろも人生の短さについて日頃からあーだこーだ言っていたので話は盛り上がり、日が沈んだら眠るいつもとは違って、今日は夜遅くまで語り明かしたのでした。
そして別れの日の朝。
今日はバスでメンドーサに向かう日。
ここを離れるのは名残惜しいけど、これでアンドレスともお別れです。
犬たちも見送りに来てくれました。
”時間があればもっとここにいたかった。また日本にも遊びに来てね。”
と言うと、アンドレスは嬉しそうにしていました。
ありがとうアンドレス。素晴らしい時間をありがとう。
kicco
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