雨の降る夕暮れ時。イランの山岳地帯で路頭に迷う…。
22/JUL/2015 from Esfahan to Chama
今日はエスファハーンからバスに乗ってサルアガセイエッドという小さな村へ向かう事にしました。
旅仲間の旅丸のshoさんと、みさとちゃん&けんくん夫婦にオススメされた場所で、日本のガイドブックにも海外のガイドブックにも乗っていない、全く観光地化されていない村なんだとか。
その村には宿もないしレストランもない。運が良ければ民泊させてもらえるみたいですが、野宿覚悟でテントと寝袋を持って向かいました。
ちなみに旅丸のshoさんとは、イランVISAのことを相談したのがきっかけでチャット友達になりました。
shoさんはすごく親切でひとつ質問したら、質問した内容の20倍ぐらいのお役立ち情報をどんどん教えてくれます。
もれなく下ネタのおまけ付きですが。笑
ちょっと話がそれましたが、今日僕たちが向かうのはサルアガセイエッドという小さな村。
サルアガセイエッドへの詳しい行き方は旅丸のこちらの記事を参考にしてください。
【秘境好き必見】イランの知られざる秘境サルアガセイエッドの全貌解明
バスを4台乗り継いで、8時間ぐらいかけて移動します。
まずは宿からエスファハーンのバスターミナルへ。
出発間際のバスは一番後ろの席しか空いてなかったのでそこに座りました。
イラン人はやっぱり話したがり。
乗り込んでしばらくすると、前の方の席から男性が通路を歩いてやってきた。
「▽△◎■☆」何やらペルシャ語で話しかけてくる。
うーん、わからない…。
そしたら隣の席のおじさんが「イングリッシュ?」って聞いて来た。
“うん、イングリッシュ、イングリッシュ!”って答えたけど、そのオジサンは「イングリッシュ」しか話せず。笑
その後も前の席から男性がやってきて、「ジャパン?グッドグッド」と言って去っていきました。
そしてまたしばらくしたら、また前の方の席からわざわざ別の男性がやってきました。今度はさっきの人よりももうちょっと英語が喋れる人。
「どこから来たの?シャーレコード(バスを乗り継ぐ街)では何をするの?シャーレコードのいいところ知ってる?」そんなことを話し、そして「Welcome to Iran.」と言って去っていきました。
さらにまた別の男性もやってきて、同じようなことを話したり。
バスの中ではずっと誰かと話していました。
席も遠いのに外国人がいるからってわざわざ話しかけにくる国って、それほど多くない。
イランの人たちはとにかくコミュニケーションしたい気持ちが前にでるんだろうな。
日本人の国民性とはかなり違うなと感じます。
昨日は夜更かししてブログを二つも書いたからくたくた。
寝たいのに眠れない嬉しい状況が続きました。笑
バスの車窓から見えるのはこんな景色。
農業も行われているみたいだけど、見るからに乾燥した土壌。
街中で見かける農作物の元気がないのも頷けます。
そしてバスは最初の中継地シャーレコードに到着。
次の街ファルサンへ向かうバスがすぐに見つかったので乗り込みました。
数時間後にはファルサンに到着。
ここで次の街チェルガードへ向かうバスを探します。
でもバスを降りた所はバスターミナルじゃなくて道のど真ん中。
チェルガードにはどうやって行ったらいいんだろう。
きょろきょろしていると、「バスはこっちだよ。」と英語が喋れる男性が助けてくれました。
街中で見かけたのは民族衣装(?)を売っているお店。
この時は知りませんでしたが、この衣装を着た人たちとこの先でたくさん出会うことになります。
親切な男性のお影で無事バス停に到着。
お腹がすいたから昼ご飯を買いに行こうとしたら、さっきの男性が着いてきて注文するのを手伝ってくれました。
この男性も行き先が同じだったらしく、買物の後は同じバスに乗り込みました。
バスが発車するのを待ちながら昼食タイム。
さっき買ったサンドイッチみたいなやつとフルーツジュース。
このサンドイッチは見かけによらずめっちゃ美味しかった!
前の座席には目がくりっくりのかわいい子供。
通路には謎の物体の上に座っている人がいました。
何に座ってるんだろうと後で見てみたら、車用のフィルターでした。
こんなのに座って2時間。想像しただけでもお尻が痛くなってきます。笑
そしてチェルガードに着いたのは午後4時半。
ここまでは乗り換えの待ち時間もほぼゼロで、かなりスムーズに来れました。
この街から目的地のサルアガセイエッド行きのバスを探します。
街の雑貨屋さんには、商品に混ざって逆さ吊りにされた羊肉が。
しばらく街を歩き回ってようやくバス乗り場を発見しました。
バス乗り場と言っても、ただの売店。本当にこんなところに来るのかなぁ。
1時間ほど待ちましたが、バスがやって来る気配は全くありません。
周りにいる人に聞いてみても、「今日中には来るよ。」みたいな反応。
売店の前で座って待っていると、近くにいたおじさんたちが話しかけて来ました。
僕たちはペルシャ語が全くと言っていいほど分からないので、「ごめん、全然分からない。」と英語やジェスチャーで説明します。コミュニケーションが全然できていないのは明らかなのに、おじさんたちは全く諦める気配がありません。
何も通じなくてもずーっと僕たちに話しかけ続けるおじさんたち。
ノートにペルシャ語をアルファベット表記したりして延々と。
おじさんたちに話しかけられ続ける事、一時間半。
ようやくバスがやって来ました。
結局お互いの名前ぐらいしか分からなかったなぁ。笑
やって来たバスには人とモノがぎゅうぎゅう詰め。一日数本のバスなのでみんな限界まで詰め込みます。
バスが出発してしばらくすると、後ろに座っていた男性が英語で話しかけて来ました。
こんな山奥へ向かうバスに英語を喋れる人が乗っていたことにビックリ!
彼の名前はアスカルと言って、このバスで1時間ぐらい走った所にある村に住んでいるそうです。
バスの中でアスカルと話していると、他の乗客たちがペルシャ語で「おい、アスカル!何話してるんだ?」と聞いて来ます。そしてアスカルがバスの中の人全員に、僕たちと話した内容を説明します。
「彼らは日本人で、イランには1週間前から旅行で来てて、テヘランとイスファハーンに行ったことがあって…」
その間車内は静まり返る。そしてまた別の人が質問をする。
ひたすらその繰り返し。なんだろうこの状況は。笑
バスの車窓から見えるのは険しい山々。
手前に見える緑と黄色の土地は畑。水色の点々は養蜂箱です。
そんな山々にぽつぽつと見えるのは遊牧民のテント。
冬には一面雪で覆われる山岳地帯。暖かい夏の期間だけここにやって来て暮らしています。
夏と言ってもかなり寒いし、周りに何もないこんな所で暮らすなんてすごいなぁ。
バスを見つけてテントから飛び出して来た子供たち。元気です。
バスに乗る事1時間。
険しい山々に囲まれた川沿いにバスが停まりました。
「ここが僕の家のある所だよ。」
アスカルが言いました。
どうやらアスカルの村に到着したみたいです。
でも、村と言っても辺りには川以外何も見当たりません。
バスから荷物を降ろすアスカル。
すると、山の方から人が現れました。
よく見たらバスから見えるすぐ近くの山の中腹に黒い小さなテントが見えます。
中には人が数人いるのが見えます。
あそこがアスカルの家なのかな?
しばらくすると、荷物を降ろし終えたアスカルが窓越しに話しかけて来ました。
「君たち、僕の家にこないか?」
”えっ?”
「家族にも会わせたいし、泊まっていってよ。」
突然の提案にためらう僕たち。
もちろん興味はありましたが、本来の目的地はサルアガセイエッドに行くこと。もし今ここでバスを降りたら、明日何時にバスがくるかわからない。
それにもし明日のバスが来なかったりしたら、日程の関係でサルアガセイエッドに行けなくなるかもしれない。
”ごめん。行きたいけど、予定通りサルアガセイエッドに行く事にするよ。”
「そうか。じゃあまたね。」
そう言って、アスカルは黒いテントの中に消えて行きました。
再び走り出すバス。
外は暗くなったし雨も降ってきた。
アスカルのテントに泊まってたら水浸しだったろうし、外は寒い。
ここは断っておいて良かったのかもしれないな。
バスの中できっこと話します。
でも走りだして数分後。
気づいたら僕はバスを止めていました。
”ごめん、ここで降ろして!”
英語でそう言いながらドライバーの肩を叩いてバスを止めてもらい、バックパックを外へ降ろします。
人との出会いは一期一会。
サルアガセイエッドに行けなくなるかもしれないけど、今からアスカルの所に行こう!
頭では別の事を考えていたはずなのに、体が勝手に動いていました。
僕たちが降りるとバスはすぐに走り去り、何もない山奥は静まり返りました。
空からは勢いよく落ちてくる冷たい雨粒。
バスは二分ぐらいしか走ってないはずだから、数百メートル戻ればアスカルが入って行ったテントが見つかるはず。
冷たい雨に打たれながら、来た道を歩いて引き返します。
でも、いくら歩いてもさっきのテントが見つからない。雨もざんざん降ってきた。
走って来たのは一本道。もう1キロは歩いた。こんな遠いはずないのに…。
道のすぐ横にあった黒いテント。
歩きながら探しているのに見逃すはずはない。
絶対にこの先にあるはずだ。
びしょ濡れの体にムチを打ち、さらに歩みを進めます。
あとひとつ、あとひとつ先の曲がり角まで。
でもどんなに探してもアスカルの黒いテントは見つかりませんでした。
ここまではずっと一本道だったし、あれだけ周りを見ながら歩いてテントを見逃したとは考えられない。
となると残された可能性は一つ。
『わずか20分ぐらいの間に、アスカルは移動式のテントと共に山の中に消えてしまった。』
信じられないけど、そう考える他ありませんでした。
辺りには何もない山奥。
向かいには雪を抱く山。
強くなる雨で体もバックパックもずぶ濡れ。
熱を奪われて冷たくなっていく体。
そして日は暮れて行くのでした。
つづく
daigoro
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