死後の世界があるってことは、物理学的に明らかなんだよ。
5~6/AUG/2015 in Mashhad
マシュハドはイランで一番の聖地として知られています。
その場所のことを、カウチサーフィンのホストのソルーシュは”ホーリー・シュライン”と呼んでいました。
ソルーシュによると、ホーリー・シュラインはイスラム教徒に取ってメッカの次に重要な巡礼地だそう。
そこはハラムまたはハラメ・モタッハル広場と呼ばれることもあります。
ホーリー・シュラインの中は服装も厳しく、女性はチャドル(全身を覆う布)が必須です。
私はチャドルを持っていなかったので、ソルーシュのお母さんが貸してくれました。
(入口で借りる事も可能ですが、できればホーリー・シュラインの周りを歩く時も正しい服装の方がいいということでした。)
ソルーシュの家は郊外にあるので、ホーリー・シュラインまではちょっと長い道のりです。
まずはタクシードライバーのお父さんが、仕事前に駅まで送ってくれました。
最寄り駅からは電車に乗って市内に向かいます。
電車は中国の車両で、新しくて綺麗でした。
電車を降りた後は、バスに乗り換えます。
チャドルって袖を通すところや頭が被れるように丸くなってたりするもんだと思ってたけど、実はただの半円の布。めちゃくちゃずれやすくて大変。何度直しても髪の毛が出ちゃう。
チャドルを抑えながらペットボトルを抱えてバスに乗り込み、ポールを持つだけでも精一杯。
ずっと片手であご辺りの布を握っとかないといけないの。すごいストレス。暑いしうまくいかないしイライラ。
なんでこんな面倒なことをやらないといけないんだろう。ほんと大変だ。
「イラン人女性はチャドルに関してはプロフェッショナルだからね。」と、何度も私のチャドルを直してくれながらソルーシュは言っていました。
確かになぁ。みんなこんな布をずっと被っててすごいなぁ。
さて、そんなこんなでチャドルに苛立ちながらも、聖地ホーリー・シュラインに辿り着きました。
ここは異教徒でも無料で入場できますが、ガイドと一緒に行かなくてはいけません。
なんと24時間開いているというから驚きです。
(ただし、観光客が入れる時間は限られています。)
ホーリー・シュラインの外も、チャドルを着たたくさんの人で賑わっています。
ソルーシュによると、サウジアラビアから来ている人もかなりたくさんいるみたい。
服装や言葉で分かるんだって。
ホーリー・シュラインの入り口で男女に別れて厳重な荷物チェックを受けて、入場しました。
私たちのガイドをしてくれる事になったガイドは誠実そうな若い女性。
ここで働いている人は、受付の人も掃除の人も警備員もガイドも、全員がボランティアなんだそう。
そして、みんながここで働いているのは「神様へのお勤め」だから。
それだけの理由でこれだけの人が無償で働きにくるなんて、なんてすごい力を持っているんだろう。
カメラの持ち込みは禁止だけど携帯は持ち込み可だったので、ガイドに携帯のカメラで写真を撮って良いか確認すると、「携帯なら問題ないですよ」といって、私たちの写真を撮ってくれました。
カメラは持ち込み不可なのに、携帯の写真は可だなんて変な感じ。
ここは、イスラム教シーア派の指導者エマーム・レザーの聖墓を中心とした広場です。
ガイドの女性が説明します。
「エマーム・レザーはとても偉大な方でした。
例えば、こんな話があります。かつてペルシャでエチオピア人を迎え入れた話。
顔つきも言葉も全く違うエチオピア人と同じテーブルで、なんと一緒のナプキンを使って食事を摂ったのです。
人種は違っても人間はみんな平等であるということを、身を以て示したのです。」
うーん、昔はすごかったのかもしれないけど、今では当たり前のことだからすごさが分からない…。
逆に、アフリカの人々に対してよほどの差別があったんだろうな、と思ってしまいました。
中には広々した門がたくさんあります。
どこを切り取ってもきめ細かい装飾。
圧巻です。
そして、とにかく驚いたのはその規模。めちゃくちゃ広い!
何百メートル歩いても、次々と新しい広場が目に入ります。
私が独自に調べて計算した所によると、このホーリー・シュラインの広さはなんと東京ドーム12個分!!
水飲み場だけでも確か7個あると言ってたかな。
それにしてもものすごい人!
絨毯が次々と敷き詰められていきます。
一日に何度も絨毯を出し入れしますが、みんなボランティアで働いているそうです。
あっという間にものすごい数の絨毯が並びました。
子供たちも大はしゃぎ。
そしてお祈りの時間。
この炎天下でもたくさんの人が熱心にお祈りしています。
ホーリー・シュラインの中には3つぐらい博物館があります。
はっきり言ってあまり興味はなかったけど、暑かったし入ることにしました。
イスラムの美術品がずらり。
でも、そんなに興味を持てるものはなかった。
一番の見どころとも言える、ペルシャ絨毯の博物館は閉まってたし。
そんな博物館のどんな展示よりも興味深いのはこのホーリー・シュラインそのもの。
このホーリー・シュラインの中心にはエマーム・レザーの聖墓があります。
「ここは、神聖なところだから異教徒を入れることはできません。」と、ガイドの女性。
それを聞いたソルーシュがびっくりして交渉してくれたけど、ガイドは困った表情を浮かべるばかり。
この門の先なんだけどなぁ。
お墓は噂によるとすごくすごく綺麗なところだそう。
私たちが訪れたシーラーズのシャー・チェラーグ廟よりも、もっともっと美しいんだって。
見られないのはすごく残念だけど、メッカに次ぐ神聖な巡礼地に入れただけでもすごく有り難いと思ったし、もしムスリムの人が私たちが来ているのを見て不愉快に思ったり、神聖な場所を穢されたと思うぐらいなら入らない方がいいや。
十分にこの場所の重要さと偉大さは味わうことができたから、満足している。
そう思って立ち去ろうとしたそのとき。
死者の棺が次々と運び込まれてくるのが視界に入りました。
親族が棺を囲んで歌う。
♪ラーエラーッハ エッラッラー
え?!
これは…
モーリタニアでラクダ使いのシディが歌ってたのと同じだ!
(モーリタニアのラクダ旅の記事はこちら▶︎ラクダ旅の最後に現れた大都会。バイバイ、シマ&シロ。)
そう。シディもイスラム教徒。
そして、もう一つ思い当たったことがあって、昔の動画を見てみました。
スーダンで見たスーフィーダンス。
リズムは違うけど、言っている言葉は全く同じ。
(スーダンのスーフィーダンスの記事はこちら▶︎ハエまみれの絶品ラクダ肉 × スーフィーの祈り)
ガイドにどういう意味か聞いてみました。
「『アッラー以外に神はいない』という意味ですよ」
西アフリカから東アフリカ、そしてここイランまで。
こんなに広い範囲で同じ言葉が唱えられているなんて。
イスラム教のパワーに改めて驚かされ、ホーリー・シュラインを後にしました。
そして、別の日の夜。
改めてホーリー・シュラインを訪れました。
今度は車で向かいます。
ホーリー・シュラインの地下は広い駐車場になっていました。
中に入ると…
うわ!!すごい!
めちゃくちゃすごい熱気!
モザイクは昼見ても夜見てもやっぱり美しい。
それにしても…
どこを見ても人・人・人…!!
この広い広いホーリー・シュラインが人で溢れかえっています。
何千、いや、何万人もの人が押し寄せていました。
今日は別に特別な日でも何でもなくて、毎日こんな状態なんだそう。
エマーム・レザーの命日には、ホーリー・シュラインの外にも人が溢れかえるそうです。
涙を流しながらお祈りしている人もたくさんいました。
「みんな神様にお願いごとをしているんだよ」とソルーシュ。
私たちは入れなかったけれど、エマーム・レザーの聖墓があるところはさらにすごい熱気でした。
ホーリー・シュライン…
こんなにすごいところだとは思ってもみませんでした。
今まで訪れたイランのモスクは一体なんだったんだと思えるほど。
ここはイランに来たら、何としてでも行くべき場所です。
そして家に帰り、ホーリー・シュラインのことを思い返していると、どうしても聞いてみたくなりました。
”ソルーシュは、死後の世界があると思ってる?”
「あるよ。物理学の観点から明らかにそう言えるから。」
迷いなく答えるソルーシュ。
”え、物理学の観点から?”
宗教と科学は一番相容れないものだと思っていた私には意外な回答です。
「例えばこのビニール袋。この後どうなる?」
”ゴミになって燃やされる。”
「じゃあそのあとどうなる?」
”灰になる。
「じゃあそのあとは?」
”うーん。”
「何かに形を変えて生まれかわるでしょ。」
”そうだね。”
「地球上にある全てのものは、ずっと地球から離れることがないんだ。原子レベルで。」
”うん、その通りだ。”
「じゃあ死後の世界があるってことでしょ」
”え?分からない。なんで?”
「うまく説明できないけど…」
そういって、どうやったら説明出来るものかと考え込むソルーシュ。
「それに、一回死んだ人がこの世に戻ってきて、あの世の姿を見てきた人がいるんだ。
その人の話からも、死後の世界があるって分かるよ。」
そんなの…イスラム教徒で天国を信じてたら、みんな意識が朦朧としているときに同じような夢を見るんじゃ…。
ソルーシュはしきりに科学的だって強調してたけど、はっきり言って全然科学的ではない。
とにかく、ソルーシュにとってはそれぐらい当たり前すぎて明らかなことなんだ。
彼はイスラム教の世界を完全に信じてるし、ちょっと話してただけでも自信満々なのが分かる。
もしイランで育って周りがみんな同じ考えだったら、私も死後の世界を信じてる側の人間になるだろうな。
「イスラム教は完成された宗教なんだ。祈りは神への自分から発する言葉で、コーランを読むことは神から自分への言葉。コーランを読むことは神の言葉を聞くことで、読んでいると神からの強いパワーを感じるんだ。」
死後の世界を信じられたら死を恐れずに済むのになぁ。
死ぬのが怖くて仕方がなかった子供の頃。
死後の世界を信じられたら楽なのにって何度も思った。今さら信じるのも難しいけど。
ソルーシュは、”MARS ONE” というプロジェクトにエントリーしている。
人類が火星に行って、そこで生活するプロジェクト。一生地球に戻れない片道切符なんだって。
数年後からトレーニングをスタートして、8年ほどトレーニングした後、火星に送り込まれる。
エントリーにはたった15ドルしかいらないらしい。
「今の世の中は神様からの試練だ」ってソルーシュは言ってた。火星に行くことも試練。
いい行いをしていれば、この世では会えなくてもいつかもう一度家族にも会える。
そんな風に考えることなんて到底出来ない私には、宗教の持つ計り知れない力にただただ圧倒されるばかりでした。
kicco
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