カルテットを聴いてしまった。
27/JUN/2014 in Sao Luis
バヘイリーニャスからサンルイスへのバス移動。
旅行中ずっと聴いていなかったクラシックを初めて聴いてしまった。
意図的に避けてた訳じゃなく、だいごろは海外のロックとか上原ひろみとかが好きなので、何となく譲ってた。
今日は久々に触れてみたくなって、iPodから選んだ曲は、チャイコフスキーのカルテット第一番。
あれは大学院のとき。カルテット一曲丸々、初めて弾いたんだった。
ああ、このフレーズ。
こんなにも美しいフレーズ。
あのとき拙いながらも弾いてたんだ。
今、ここにビオラがいたなら、すぐにこの左手でネックを握りしめ、優しい木のボディを耳元に挟み込んで、そして、しなやかな弓を右手で持って、そのフレーズを辿るだろう。
今は、何もない左手をじっと見ることしかできない。
恋しい。
懐かしいなぁ。
あのときのメンバーの真剣な表情がありありと思い浮かぶ。
私がビオラを弾くのが好きな理由。
ひとつ、自分の中の表現したいものを形にしてくれるから。
心の中の悲しい、悔しい、もやもやする感情や、楽しい、嬉しい、幸せな感情を、ビオラに乗せて弾く。
或いは逆に、楽譜に書いてある感情がビオラを介して自分に伝わってくる。
それが純粋に快感なんだ。
心の中を雄弁に語るのは、ときに言葉じゃなく、音楽だったりする。私もだいごろも大好きなピアニスト、上原ひろみはこのことに関して天才的だ。彼女から溢れ出す感情は、いつも会場全体を飲み込み、みんなの心の色を彼女と同じにしてしまう。
ふたつ、美しい世界を見せてくれるから。
初めて大学オケでパートトップをした、モーツァルトの魔笛序曲。10分にも満たない曲を、半年間馬鹿みたいに時間をかけて練習した。その本番でのこと。
曲のクライマックス。自分はステージの上にいるのに、幽体離脱したみたいに、指揮者の真上ぐらいに自分がいるみたいな感覚に陥った。
自分の意思と関係なく、私は演奏を続けていた。
それはあまりに美しい世界で、身体中が痺れた。
もっと美しい音の重なり、響きを見たい。そう思った。
みっつ、人との繋がりを与えてくれるから。
これが一番大切な理由。
どれだけ多くの人と、ビオラを通じて親密な関係を築けたか。
何度も練習を重ねて、議論して、笑って、もめて、また練習して。
ひとつの曲を仕上げるために踏むプロセス全てが、人間関係を作ってくれる。
ビオラを通じて出会った人を私の人間関係から除外すると、全然違う人生になってしまう。
今頃、実家の片隅で梅雨の湿気に苦しんでいるんだろう。
一年後、お互い元気な姿で会おうね。
kicco
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