旅人の悩み。貧しい人々にお金をあげるべきか?
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05/SEP/2014 in Gondar
エチオピア最初の街ゴンダール。
元々この街は次の目的地への中継地点で一泊だけの予定だったのですが、あまりにも良い街だったので一週間近く滞在してしまいました。
そして1週間の滞在の間、日中はずっと街中を歩き回っていたので知り合いもたくさん出来たし、面白い出会いもたくさんありました。
そんな中で途上国ならではの出会いもいくつかありました。いわゆるお金目当てで観光客に近づいてくる人たちです。おそらく私たちが入国前にネットで調べた時に”ウザいエチオピア人”と先人たちのブログで表現されていたのもこのタイプの人たちではないかと思います。
私たちもこれまでだったら、「ウザい。」「鬱陶しい。」という一言で片付けてしまっていたと思います。
だけど、ここゴンダールの街の人たちは本当にフレンドリーで親切な人たちばかりだったので、そんな街の人々に対して”ウザい”とか”鬱陶しい”といった言葉がどうしても相応しくないように思えてなりませんでした。
なので、そんなゴンダールでのエピソードやそれに対して私たちが感じた事を書きながら、考えをまとめておこうと思います。
きっこと2人で考えながら書いていたら文章がかなり長くなってしまったので、全体を3回に分けて、今回はまずゴンダールで起こった2つのエピソードをご紹介します。
どちらも途上国ではよくある光景ですが、このタイミングでこのありふれたやり取りを改めて考えてみます。
チップ目当てに道案内をする人たち
ゴンダールで完全に壊れてしまったカメラのレンズ。
試しに修理屋さんを探してみようと街のインフォメーションセンターへ向かいましたが、残念ながら夕方だったのでもう閉まっていました。
すると近くにいた男が、「俺はインフォメーションセンターの者だ。どうした?」と話しかけてきました。
かなり怪しい雰囲気がしますが、ゴンダールではチップを要求された事は一度もないし大丈夫だろうと、カメラの修理屋を探していることを告げました。
「じゃあ、修理屋の場所を知ってる奴を紹介する。」そう言って電話すると、すぐに彼の友人と見られる男が3人もやってきました。
彼らに案内されて10分ほど歩くと、たどり着いたのはただの携帯電話屋さん。私たちのホテルのすぐ近く。
並んでいるのは携帯電話のバッテリーだけで、カメラやレンズなんて全く置いてないし、こんなところで修理できるとはちょっと考えにくい。
”ほんとにここで修理できる?”
「彼はちゃんと技術があるから大丈夫だ。」「モノを見ないと分からないから、とにかくレンズを持ってこいよ!」「ホテルはどこだ?ここで直せないような物なら、他の修理屋を紹介するから。」
ホテルの場所が知られるのも嫌だし、技術のない人が触ってレンズの状態がこれ以上悪くなるのも嫌だ。それに3人代わる代わる同じようなことを何度も言ってきてかなり面倒くさい。
とりあえずホテルに戻って落ち着こうと、「じゃあレンズを取ってくる」と告げてホテルに戻る。
ホテルに戻って二人で作戦会議。
やっぱりレンズを持っていくのは良くない。あの携帯電話屋さんでは分解されて元に戻せなくなるリスクが高過ぎる。それに安全そうな街だけど以前拳銃強盗もあったらしいし何が起こるか分からない。
もう一カ所修理屋があるって言ってたからそこを見せてもらって、信頼できそうだったら後でレンズを持っていこう。
レンズを持たずに彼らの元に戻ると、3人は突然苛立ち始めました。
「レンズを持ってくるって言ったのになんで持ってこないんだ?」
”ごめん、やっぱり本当に修理できるって信じられない。もうひとつあるって言ってた修理屋を見せてほしい。”
「なんで日本人は考えるのにそんなに時間がかかるんだ?!」
「お前らの技術は一体どれだけ高いって言うんだよ!」
「良い加減にしろよ!」
なんか向こうの機嫌が突然悪くなったのでもう別れようかとも思ったけど、もう一つの修理屋に連れていってくれるらしいのでついて行く事に。
修理屋はホテルのすぐ向かい。
薄暗い室内で、技術者がCDプレイヤーを直していた。
コンパクトカメラも修理品として預けられていたけど、一眼レフやレンズ交換式のカメラは一つも置いてないし、店の人も自信なさげな感じ。
ここに任せるのはちょっと難しそうだったので、”やっぱりここで修理するのはやめとく。もっと大きな街に行った時に探してみるよ。ありがとう。”と言うと、
「Shit people! Shit people!!(くそ野郎!)」と何度も毒づかれた。
そう言った後に、「案内してやったんだから金を払え!これは俺たちのビジネスだぞ!!」と言いはじめた。
あーやっぱりそうなってしまうのか。悪い意味で懐かしいこの感じ。
エチオピアに入ってから出会った人たちはみんな何の見返りも求めずに案内してくれる親切な人ばかりだったから、この街の人は大丈夫なんだと思って油断してた。
結局彼らはどこの国にもよくいるチップ目当ての人たちでした。
こういうケースでは案内される前に”お金は払わない”と事前に告げるのが基本なので、最初に確認しなかったのは私たちのミス。でも道案内でお金を取ろうと考えているのなら向こうにも説明する義務が少なからずあるし、何よりShitと言われた相手にお金を払う気にはなれなかった。
”お金は払わない”と言ってそのまま立ち去ると、「お前らのホテルの場所は知ってるんだからな!」と後ろからさらに罵声を浴びせられました。
結局今回のケースでは私たちは最後までお金を払いませんでした。
理由は2つあります。
1つ目は、彼らが始めにツーリストインフォメーションの人間だと言っていた事。
どの国でもそうですが、ツーリストインフォメーションは基本的に無料で観光情報を教えてくれます。そしてここゴンダールも勿論例外ではありません。前日に行ったときは当然無料でした。
なので、彼らが始めにツーリストインフォメーションの人間だと名乗った以上、払う理由はありません。
(もちろん彼らはツーリストインフォメーションの人間ではありませんでした。)
2つ目は、彼らがお金を要求して来た時に「これは俺たちのビジネスだ!」と主張した事。
”ビジネスと言うのだったら道案内する前にきっちり料金とサービスの内容をはっきり示してもらわないと困る!”とこっちが言うと、向こうはひたすら暴言を吐いて来ただけ。”じゃあビジネスは不成立だね”という結論になりました。
私たちも本当に道が分からずに困っていて、お金を払う事を前提に案内してもらう時もあります。でも、約束通りにお金を払ったときも、今回みたいに払わなかったときも、あまりいい気持ちで別れたことはありません。
そういう親切は無料であってほしいと思うのは、彼らからすればきっと金持ちな私たち旅行者の勝手なんだと思います。
複雑です。
そういえば彼らのうち一人が、「日本人は優しいけどヨーロッパ人は嫌な奴が多い。」と言っていたのですが、もしかしたらヨーロッパ人はこういう時にキッパリ断る人が多いからなのかもしれません。
サッカーボールを欲しがる子供たち
次は同じくゴンダールで出会った少年の話。
彼とはゴンダールに着いた次の日から毎日のように顔を合わせていました。
最初に会ったのは教会に行く途中。
このエチオピアのユニフォームを着た子です。
この子は英語がびっくりするほどペラペラで、僕たちと会う度にサッカーの話をしてきました。
そして次の日に会った時に僕もサッカーが好きだと知ると、「シンジカガワ知ってる??」「今度一緒にサッカーをしようよ。」と言って来ました。
”面白そうだね。いいよ。”と僕が言うと、「でもサッカーボールがこの前割れてしまって、新しいボールが必要なんだ。」と彼は言ってきました。
英語が得意な少年、サッカーボール。
途上国を旅した事がある人ならここでピンと来ると思います。
100%そうとは言い切りませんが、おそらく彼はサッカーボールではなくお金が欲しくて僕たちと話をしに来ているんだなと感じました。
しばらく歩きながら話していると、案の定彼は「サッカーボールは20ブル(約100円)するんだけど、買ってくれないかな?」と言ってきました。
もちろん彼は本当の事を言っている可能性もあります。なのでサッカー好きの僕としてはかなり迷ってしまったのですが、ここではきっぱり断る事にしました。
”ごめん。ボールを買ってあげる事は出来ない。”
彼は次の日も私たちの前に姿を現しました。
「お母さんが10ブル出してくれる事になった。だから残りの10ブルだけくれないかな?」
「明後日の土曜日が試合なんだ。ボールを買ってくれないと練習が出来なくて負けてしまうよ!」
「一緒にサッカーがしたいだけなんだよ。」
彼は友達も連れて来ていて、2人でそう訴えてきます。
でも、本当にそんなに試合が近いのなら他の友達にボールを借りて練習する事だって出来るだろうし、そもそも彼らはいつも街をぶらついているだけ。僕たちがサッカーボールを買ってあげたとしても、すぐに店に返して現金に変えてしまうかもしれません。
”サッカーは一緒にしてあげるし、試合も応援しに行ってあげるよ。でもお金はあげない。”
今回も心を鬼にしてそう言うと、彼らは「お金じゃなくてサッカーボールがほしいだけなのに!」と言って舌打ちをしながら去って行きました。
そして、次の日。
これまでお世話になったゴンダールの人たちに少しでも恩返ししようと、いつものように街角で血圧測定サービスをしていた時。
再びあの子供たちがやって来たのです。
つづく
▶︎次回:エチオピアで血圧測定 × サッカー少年に対する葛藤。