テーマパーク化されつつある死者を弔う鳥葬の儀式。
10/SEP/2015 in Larong Wuming
ラルンガルゴンパで目覚めた朝。
宿の近くのお寺に行ってみると、もう既に人がたくさん来てお祈りをしていました。
学校があったので入ってみると、みんな五体投地でお祈り中。
小さい少年も友達と競うようにお祈りしています。
こっちでは経典を開いて勉強中です。
みんな朝からすごく熱心。
学校の近くにあったのはチベット仏教関連の書籍を売っているお店。
ここにも人だかり。
その横の広場では物売りの人がバイクでやってきて店を開いていました。
みんな朝ごはんを買っているようです。
私たちもお腹が減ってきたので朝ごはん屋さんへ。
入ってみるとみんなラーメンを食べていたので私たちも。
シンプルだけど、ピリリと辛くて美味しかった。
若い僧侶たちが何か楽しそうにしているなと思ったら、スマホで動画を見て笑っていました。
質素な暮らしをしているのに、スマホは最新のiPhone6を持っている人までいるのが不思議。iPhone持ってる人が解脱できるのかな、と自分のことは棚に上げて余計な心配をしてしまいます。笑
ラルンガルゴンパの人々の暮らし
ご飯を食べたら散歩。
昨日登ったのとは反対側の丘に行ってみます。
街には若い僧侶たちが忙しそうに出歩いています。
学校がある中心部へ向かう僧侶たちとすれ違いながら、長い上り坂や階段を上っていきます。標高が高いので息が切れる。
女性が住むエリアと男性が住むエリアはくっきりと分けられています。このエリアは男性だけが歩いています。
丘の上の方に来ると、泊まっている宿の方向が一望できました。
えんじ色の家々が並んでいます。
えんじ色の家々の間を、えんじ色の僧侶が歩いていく。
洗濯されたえんじ色の服。
裏側はこんな風になってたんだ!
ふかふかの生地。これなら冬でもあったかそう。
水は各家には引かれていないので、水場に汲みに行きます。
どの家も手作り感溢れる質素な造り。
防寒のためなのか、屋根の上には土が乗せられて雑草が生えています。
宗教の力でできた巨大集落。
何度見ても不思議な空間です。
チベット伝統の鳥葬へ
さて、ここラルンガルゴンパはその町並み自体もとてもユニークで有名になりつつありますが、チベット仏教の葬儀が見られる場所としても知られています。
チベット仏教で人が亡くなったときの葬儀は鳥葬です。
鳥葬は、遺体を郊外の原っぱに裁断して放置しハゲワシなどの鳥類に食べさせる葬り方。
ちなみに中国語では、鳥葬ではなく天葬と呼ばれています。
鳥葬場へは宿から歩いても行けるみたいですが、宿で出会った日本人2人と合わせて4人揃っていたので車で行くことにしました。4人でチャーターして、片道1台50元でした。
しかし、鳥葬場へ到着してびっくり!
工事現場みたいな所にものすごく大きい建設機械があって、大工事の真っ只中。
しかも作られたばかりの真新しい変なオブジェがいっぱい。なんなんだろ?
オブジェは中に入れるようになっていて、一面に頭蓋骨が…!
でもよく見たら全部形が同じだったので作り物です。
この場所は、そのうちお金を取るようになるのかもしれない…。
仏教の死生観ってこんなの?!どぎつくてごちゃごちゃしていて、意味不明な空間です。
天葬台は完全にテーマパークになってしまっていた。
ちなみに、私たちが既に訪れたリタンでも鳥葬があって、こっちの方が何もないところで葬儀が行われて、人も少なくて雰囲気がいいみたい。
でもリタンでは週に2回しか鳥葬をしていなくて、私たちが行ったときはタイミングが合わなくて行けませんでした。
鳥葬の儀式を見る場合は、関係者以外は丘の上から見る事になっていたので登ります。
下に見えているのがさっきのオブジェたち。中央手前に見えているグレーの広場で儀式が行われるみたい。
遠くから歩いてやってくるチベット僧。知り合いが亡くなったのかもしれない。
しばらくすると丘の斜面には観光客がわんさか集まり始めました。
写真には映り切っていないけど、軽く百人はいたと思う。
私だったら自分の葬儀をこんなところではやりたくないなぁ。
後ろを振り返ると丘の上に鷹が集まってきた。
次々とやってくる。何百羽もの鷹。
みんなこれから行われる儀式のことをよく知っているみたい。
2時ごろ。
遺体が運ばれ始めた。
親族らしき人たちがストゥーパ(仏塔)の周りを回る。
死臭がするからかマスクをしている人が多い。
ストゥーパの周りを回った遺体は、天葬台に並べられていきます。
周りからは見えないようにピンクのカーテンで目隠し。
次から次へと運び込まれる遺体。
近くで僧侶がお経を唱えています。
気づけば丘の上にいた鷹は斜面を埋め尽くすほどの数に。
そして前にいた鷹から順に、徐々に天葬台の方へ間合いを詰めてくる。
でもみんなご飯のタイミングを知っていて、ピンクの幕が開くのを今か今かと待ち構えています。
空からも次々に舞い降りてくる鷹たち。
遺体に巻かれていたビニールが剥がされたようだ。
私たちがいる数百メートル離れた場所でもかすかに死臭が漂ってくる。
全然関係ないけど、前にいる女性たちが思いっきり鼻ティッシュをしているのが気になって仕方ありません。笑
最初から鼻ティッシュだったので、死臭が漂ってくるから、という訳でなさそうです。
ピンクのカーテンに隠れていて何が起こっているか見えないけど、話によると鳥が食べやすいように遺体を解体する必要があるみたいで、遺体を並べてからもしばらくナタのようなものを持った女性が処理を続けていました。
違う角度から見えていただいごろの話では、心臓を取り出して遺族が引き取ったりもしていたようでした。
かなり長い時間、遺体の処理は続きました。30分ぐらいかな。
その間、鷹たちは行儀良く頭を並べていた。
そして人が離れた途端、ばっと鷹が遺体の方へ押し寄せ、あっという間に広場は鷹で埋め尽くされた!
バキバキと骨も砕きながら肉を喰らう鷹たち。
あまりに数が多すぎて、どこに何があるのか、何が起こっているのか全然わからない。
遺体は数分もしないうちに、頭蓋骨と背骨だけになった。
鳥葬がこれほどまでに激しい儀式だとは思ってなかった。
私のイメージは、3羽ぐらいの鷹が少しずつついばんで、丸一日ぐらいかけてなくなる感じだったから。
複雑な表情でその様子を見つめる遺族たち。
お腹が満たされた鷹たちは空高く飛び上がり、やってきた山の向こうの方へと帰って行きました。
空に帰っていく鷹を見て、この地域で鳥葬のことを天葬と呼ぶ意味がしっくりきました。
火葬みたいに灰になってしまうよりは、こうやって鷹のおなかの中に収まって命を繋いでいく方が、無駄がないというか、自然に還れる感じがするというか、空に舞っていくのがなんとなくロマンがあるというか、なんて言っていいのか分からないけど、とにかく私は鳥葬って悪くないなって思いました。
でも、こんなにたくさんの人に見られるのは嫌だな…。
つづく
kicco
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