良いカウチサーファー。悪いカウチサーファー。
4~6/JUN/2015 in Uzice
セルビアの西部にあるのどかな街、ウジツェで過ごす日々。
ハリウッド映画の交渉がひとまず落ち着いたので、今日はリッキーの友達のカウチサーファーと待ち合わせをして山へ出かけてみる事にしました。
街の外れで合流したのはミロシュ。
ミロシュとリッキーはカウチサーフィンが始まった当初からのメンバーだそうです。
ウジツェの街にはまだまだ古い車がたくさん。
こんなレトロな車がそこら中を走っています。
これは冬が来たら使う暖房用の薪。
ミロシュの話では、冬になるとほとんど全ての家庭が薪を燃やすから、街中が煙に覆われて真っ白になるんだそう。
「向こうの山が見えないくらい真っ白になるんだ。憂鬱な気分になるから冬は大変だよ…。」
これは綿の加工工場。
昔はこの街の主要産業でしたが、今は中国製品にその地位を奪われて廃業に追い込まれてしまったそうです。
街歩きのおやつにビュレックという料理を食べました。
これもウジツェでは有名な食べ物だそうです。
店の前でそばの出前に使う器具みたいなのがあると思ったら、なんとビュレックを配達するためのものでした!
日本のそばとセルビアのビュレック。配達するのに使う器具が同じなのが面白い!
その後、リッキーは山登りが苦手なのでカフェで休憩。
ミロシュと僕たちの3人で山登りをする事になりました。
山登りと言っても、元々汽車の線路だった所が散歩道になっているので、そこを歩くだけで楽チン。
ミロシュからウジツェの街の事を色々と教えてもらいながら歩きます。
トンネルの中は涼しくて気持ちいい。
サイクリングをしている地元の若者と何度もすれ違いました。
散歩道から見える向かいの山の上には電波塔がありました。
ミロシュの話によると、この電波塔は1999年にNATOに爆破されて立て直されたもの。
後でリッキーにその話をしたら、なんとリッキーは空爆のあったときウジツェの郵便局の近くにいて、郵便局も爆破されたそう。その距離たったの300m!
無事でほんとに良かった…。
あと、リッキーはこんな事も言っていました。
「セルビアではユーゴスラビアの大統領の事を讃える人がたくさんいる。
だってユーゴスラビアは一時は日本と同じぐらいのGDPだったんだぜ。
でも彼の死後すべてが変わってしまった。
みんな次のヒーローが現れるのを待ってるんだ。」
そんなウジツェの街には大統領の銅像がいまでも誇らしげに立っています。
良いカウチサーファー。悪いカウチサーファー。
さっきまで歩いていた散歩道をちょっとそれて、ミロシュが草が生い茂る獣道へ入って行きました。
「この先の景色が最高なんだ。」
そう言いながら先を歩くミロシュに続きます。
すると、その先にこんな城壁が現れました。
「ここは昔お城だったんだよ。」
そして坂を上りきった先に見えてきたのはこんな景色。
”すごい眺め!”
「ウジツェの街が全部見えるだろ。リッキーも来ればいいのに。あいつここに何十年も住んでるのに一度も登った事ないんだぜ。笑」
見晴らしのいい城壁に座って、ミロシュとこれからの人生のことや、お互いの国の事について話します。
やっぱり旅をしていて一番楽しいのはこういう時間だなぁ。
「そう言えば、君たちはリッキーのところに何日いるの?」
”うーん。4日ぐらいかな。”
「その間の予定は?」
”特にない。ずっとウジツェにいようと思ってる。”
「周りに世界遺産に登録申請中のタラ山とかたくさん見所があるのに?」
”うん。せっかくウジツェにいるリッキーと出会ったんだし、ウジツェの街を歩ければそれでいいよ。”
「そうか。君たちは良いカウチサーファーだな。」
”ん?どういう意味??”
リッキーとミロシュは二人ともカウチサーフィンが始まった当初から参加していたメンバー。
カウチサーフィンが始まった頃は、旅人と地元の人がコミュニケーションを取るためのつながりを作るサイトとして、参加メンバーたちが人知れず細々と交流を深めていたそう。
「最近は、旅人なら誰でもカウチサーフィンの存在を知っている。
そして、カウチサーフィンの事を ”無料で人の家に泊めてもらうサービス” と勘違いしている人が多くて困る。」、とミロシュ。
ウジツェの街自体には特に観光するような見所はない。
逆にウジツェの周辺には世界遺産に登録されるような景勝地がたくさんあるもんだから、せっかくカウチサーフィンで旅人をホストしても、家を宿みたいにして拠点にされて、今日見たいに一緒に町歩きしたり話したりする時間がないんだそう。
「まあ、旅をしてたら行きたい所もあるだろうし、仕方ないんだけどね…。」
そう言ったミロシュの背中はとても淋しそうでした。
このレストランはやっぱりセルビアで一番だ!
昨日に引き続き、今日もリッキーの家の近くのレストランに行きました。
ここの料理は安いし美味しいしで、すっかり僕たちのお気に入りです。
今日頼んだのは豆のスープ180ディナール(約200円)。
あっつあつで味に深みがあって、すごく美味しかった。
あとはミンチを棒状にした東ヨーロッパ特有の料理。名前は知らない!
ウジツェ特産のチーズが乗っていて、ポテトとサラダが一緒になったこのプレート。
なんとたったの225ディナール(約250円)!!
こんなに安いのに味付けは高級レストランの味!信じられないコストパフォーマンス!!!
「セルビアではこの料理に豚肉を使ってるけど、サラエボで食べた時はムスリムが多いから牛だったはず。」とリッキー。確かにそうだった。
隣の国に来るだけでそんな違いが出るんだなぁ。
このレストランには別の日にももう一度来て、リッキーが予約してくれた特等席でサッカーチャンピオンズリーグの決勝も見ました。
スタッフともすっかり顔なじみになったし、地元の人が集まる暖かい雰囲気のお店。
ここは本当に良いレストランだったなぁ!
という事で、これでウジツェの滞在はおしまい。
ハリウッド映画の話がどうなるのかドキドキだけど、リッキーを信じてまたここに戻って来よう。
もし撮影がなくなったとしても、大好きなレストランは僕たちを待ってくれているはず。
”3週間後にまた会おう!!”
この街で出会った友人たちとおいしい料理に別れを告げ、ウジツェの街を後にしたのでした。
つづく
daigoro
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