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18/FEB/2015 in Potosi

ポトシのは鉱山の街。

1545年にスペイン人によって大銀脈が発見されると同時に急激に発展し、
人口は一時20万人にも及んだと言われています。

この銀山は”富の山セロ・リコ”と呼ばれています。
でも、このセロ・リコは富の山であると同時に人喰う山とも言われ、なんと800万人が犠牲になったとも言われています。
その多くはスペイン人によって集められたインディヘナの奴隷で、銀を精製するために水銀が使われたことや、鉱山の劣悪環境が原因だそうです。

穏やかな街を歩いているとそんな暗い過去があるなんて全く気付きませんでした。
今でも、鉱山で働いている人たちの労働環境は悪く、本質的には改善されていないそうです。


今日はそんな鉱山を見に行くツアーがあると聞いたので行って来ました。

なんでも働いている人たちと話したり、ダイナマイトを爆発させている現場を見れたりするそうで、楽しみです。

ツアーは一人70ボリ(約1200円)。
Silver Tours(地球の歩き方の地図に載っています)で申し込みました。
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まずは、炭鉱員たちのためにお土産を買います。
炭鉱ツアーではいくらかお土産を持っていくのがマナーになっています。

お土産はコカの葉、タバコ、
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アルコール。
(なんと純度96% !!)
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ダイナマイトなどの中から選びます。
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お土産の選択肢に食べ物はありません。
炭鉱員は食事を取らずに一日中働き続けるからです。
炭鉱には硫黄や粉塵など有害物質が多く、働いている時に食事をとると身体に悪いためだそうです。

アルコールは疲れてきた時に気付けの為に飲んだり、解毒作用があるので仕事後に飲んだり、たまに怪我の治療で使われたりするそう。
コカの葉はコカインの原料になる葉っぱで興奮作用があります。
奥歯でくちゃくちゃと噛み、空腹を紛らすため、また集中力を高めるために使われます。
コカの葉はボリビアでは合法ですが、日本では麻薬扱いなので持ち込むと違法になります。

ただでさえ、昼も夜もない真っ暗な炭鉱で働くのは精神的に負担がかかることなのに、こんな強力なアルコールやちょっとした麻薬まで摂取しないといけないなんて、どれほど身体に負担がかかる仕事なんだろう。
自分の寿命を削っていると知りながら働くのは簡単なことではありません。

私たちはコカの葉とジュースを合わせて17ボリ(約300円)買うことにしました。
 


それから別の場所でヘルメットや服やブーツ、ヘッドライトを借りました。

こんな装備を借りて準備万端!
似合う?笑
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いよいよ鉱山に突入です!
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炭鉱の入口に行くと、ツアーガイドの女性が言いました。

「はい、彼らにお土産をあげて。」

指差した先には、真昼間からビールの大瓶を片手に飲んだくれる人々。
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“え?炭鉱で働いてる人にあげるんじゃないの?”

「今週は祭り中だから誰も炭鉱では働いていないよ。彼らが炭鉱の労働者だから彼らにあげて。」

”彼らはここで働いているの?”と聞いてみると、そうだと言っています。

え?!今日は休み…?
せっかく働いている現場が見れると思ったのに…。がっかり。

それならツアーに申し込む時に教えてくれたらいいのに。
なんだか損をした気分になりながらも渋々お土産を手渡します。

はぁ。でも時期が悪かったんだ。仕方ない。
 


気を取り直して鉱山に向かいます。

まずは宿舎のような建物の中の人に挨拶。
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鉱山の周辺にはたくさんのトロッコがありました。
トロッコは鉱物を乗せると1500kgにもなります。
鉱山の中に張り巡らされたレールの上を、大人四人で押して動かすそうです。
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鉱山の奥深くで使う工具を動かすための圧縮空気を送る装置も。
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鉱山の中は真っ暗。
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それに埃っぽいし、地面は雨水で水たまりができているし石ころが多くて歩きにくい。
ダイナマイトだと思うけど火薬の匂いもして中は異様な空気です。

ところどころ天井が低いところや石が飛び出ているところがあって、何度も頭をぶつけました。
こんなにヘルメットが活躍するところにきたのは初めてかも。

最初の階層には掘った石を運ぶためにトロッコを走らせるためのレールが。
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最初に案内されたのは、こんな気持ち悪い人形。
これは「ティオ」と呼ばれていて、炭鉱のお地蔵様と言った所でしょうか。
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炭鉱で事故が起こらないように、ここでお祈りするそうです。

ガイドのおばちゃんがコカの葉をぱっぱとこの人形の周りにばらまき、タバコに火をつけて捧げました。
そして、例の96%アルコールを人形全体と、おちんちん(?!)にかけました。
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炭鉱では事故は付き物。
おばちゃんがアルコールを地面に撒いて、火をつけます。(写真の右側。青っぽい炎なんだけど分かるかな。)
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「昔は炭鉱で本物の火を使っていたからね、この火が消えたら酸素が少ないという証拠で、すぐに逃げたんだ。でも今はフラッシュライトを使ってる。便利だけど不安な面もあるよ。」

それにしても気持ち悪い…。
失礼だけど、アルコールやコカの葉はあまりにぐちゃっとしていてお供えというよりはゴミ箱みたいに見えてしまう。
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炭鉱の中は広くて複雑。
道は迷路みたいだし、地下深くに何階層にもなって連なっています。

ガイドがいなかったら迷子になって抜け出せないだろうな。
 

入口から数百メートル歩いてから梯子を使って下の階へ。

簡単な木でできた梯子は、不安定で怖い。
踏み外さないようにゆっくり降ります。
上から降りてくる人が落とした土が頭上から降り注いでくるので上は見ないように。
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梯子を降りきってホッと一息。それからまた歩いて、再び梯子を降ります。
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本当にアリの巣のように炭坑路が張り巡らされています。
 

ヘッドライトをかざすとキラキラ輝くのが鉱物です。
銀や銅、スズが取れるそうです。

炭鉱の上部にはこのキラキラ輝く鉱物でできた線があって、その線を頼りに掘り進んで行くそうです。
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さらに梯子を三段降りて、作業現場へ。

工具がたくさん並んでいました。
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これはツルハシ。見た目以上に重くて、私には振りかざすことなんてできないほど。今でも手作業が多いそうです。
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鉱山の中を一通り歩き回ったら梯子を登ります。

ポトシは標高4,070メートルの高地。
高い標高にもだいぶ慣れてきた頃だけどやっぱり息が上がります。
 

出口に向かいながらガイドの女性に色々と聞いたところ、炭坑夫の給料は週600〜800ボリ(約10,000〜14,000円)。
でも別のツアーに参加した人は一日40ボリ(約700円)と聞いたそうだから、本当はもっと安いのかも。

それに、炭鉱夫の人数は150人って聞いたけど、別のツアーに参加した人は5000人と聞いたとか、全然ガイドによって言うことが違うみたい。。どれが本当の情報なんだか。。
 

ひたすらはしごを上って暗い暗い坑内を歩くと、炭鉱の出口が見えてきました。
ようやく長い迷路を抜け出せたようです。

炭鉱にいたのは短い時間だったけど、太陽の光が見えると嬉しくて身体の緊張が溶けていくのを感じました。
 


再び炭鉱員が飲んだくれているところに戻ってきました。

そしてガイドのおばちゃんが、「ツアーはもう終わりだし少し飲んで行こう。」

と言ったのが最後、ツアーの参加者全員が炭坑夫やその家族たちから酒を飲まされまくります。
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もらったお酒は地ビール。その名も “Potosina” 。
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それと、アルコール70%のぶどうの蒸留酒シンガニ。
だいごろはストレートで飲まされまくっていました。笑
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お酒の飲めない私もガバガバ飲まされます。
あー、ビール一杯で頭痛い。笑

「お前が一気飲みしないと後がつかえてるだろ!」「せーので一緒にこのグラスを空けるぜ、せーの!」と、まさに飲ませ文句は日本の体育会系のサークルみたい。
肉体労働してたらそんなノリになるのかな。笑

私が飲めない分、隣に座っているだいごろにいっばい飲んでもらいました。笑
 

でも飲む時の礼儀作法はボリビアの炭坑夫ならでは。

お酒をついでもらったら、わざと地面に少し零します。

「母なる大地にお酒をあげるんだよ。」

地面の中で働く彼らにとっては、「母なる大地」は大切な収入源でもあり恐ろしい存在でもあります。
「母なる大地」を讃え恵みを分かち合うのは大切なことなのでしょう。
 

宴会には家族みんなが勢揃いしていて、「これがママ、これが妻、これが息子、これが姉で…」順番に紹介してくれました。
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そしてみんなで踊り狂います。
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おばあちゃんがだいごろを指名。
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おばあちゃんはだいごろのホッペにチューしながら、嬉しそうに踊っていました。笑
だいごろもまんざらではなさそうです。
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今は一年に一度のお祭りシーズン。
炭鉱員にとって大切な休養日です。

働いている姿を見られないのは残念でもあったけど、逆に言えば一緒に飲んだくれられる機会なんて滅多にない訳だからラッキーだったのかも。
 

明るく飲んだくれる炭鉱員たち。

その中の子供を連れた男性に、答えを半ば分かっていながらも聞いてみました。

“この子も将来は炭鉱で働くのかな?”

「まさか!!この子は絶対にここでは働かせない。シビルエンジニアになるんだ。」

それまでは酔っ払って虚ろだった男性の瞳が、突然鋭くなった瞬間でした。



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