LINEで送る
Pocket

05/SEP/2014 in Gondar

これまでの一連の記事でエチオピアでのゴンダールで起こったエピソードを書いてきました。

どちらもお金を与える事について、私たちと現地の人たちとの間で行われたやり取りでした。

与える事について

インドから中東にかけての国々では、バクシーシ(喜捨)という考え方があります。
富める者が貧しい者に財産の一部を分け与えることは当然。
そうすることによって、富める者はより良い来世を迎えることができると考えているし、貧しい者も彼の来世ために貢献してあげたんだと考えるから、物乞いすることに負い目はない。

貧しい者には与えよと言うけれど、どうしても旅をしていく中でうまく与えられない。

なんでだろう?

全員にお金をあげてたらキリが無いから?
自分のお金がなくなってしまうから?
私たちがケチなだけなのかもしれない。
 

—–

でも、もう一つ心にひっかかっている事があります。

それは「今、ここで彼らに与えることが、本当に彼らのためになるのか?」という疑問。

お金を与えるだけの支援は人を腐敗させるだけで終わる。
そういう視点を持つ人もいる。援助じゃアフリカは発展しないと。
スーダンでもそういったリスクを抱えながら、向き合いながら支援している人たちに出会った。現場で実際に働く人たちの中でそういう考えを持っている人は本当に多い。

与えなくてはいけないのは物でもお金でもなく、生きる為に必要な技術や考え方、それを理解する為の知識。なのに、欲する人たちに簡単にお金を渡してしまったら、彼らは学ぼうとしなくなる、自分の力で生きる事をやめてしまう。

例えばある国で義足を無料で作ってあげる支援をしている所がありました。そこへやって来た患者さんは、「これからはこの義足でしっかり働きます!がんばります!」と言って帰って行きました。
そして数日がすぎたある日、その患者さんは義足を捨て、道端で物乞いをしていました。

「だって義足をつけて働くより、物乞いをしている方が儲かるから。」
 

—–

サッカーボールを買う為に観光客にお金をねだる子供も同じ。

もし私たちが彼らに簡単にお金をあげてしまったら、大人になっても同じ事を続けると思う。ゴンダールにいた流暢な英語で観光客を道案内をして、チップをもらおうとする若者たちと同じように。
だからあげない。

もちろん、その日食べる物がなくて、手足も動かなくて、自分ではどうしようもない。そんな人にはお金を渡す事もある。
でも、自分の力でまだ何とかできる人には、物乞いではなく他の形でお金を手に入れてほしいと思う。
 

—–

こんな考え方もあります。
インドなどの貧しい国々では、マフィアが幼い子供の手足を切断してから路上に連れて行って物乞いをさせ、後で稼ぎを巻き上げるという犯罪が横行しています。
そのため、簡単に物乞いにお金をあげてしまうとそういった犯罪を助長する事から、「物乞いにお金をあげないで!」という活動をしている団体もたくさんあるそうです。

だから、「自分たちはあげたお金の行き先が分からない限り、物乞いには絶対にお金をあげない。」という旅人もいます。
 

—–

考え方は人それぞれですが、少なくとも旅行者として「自分なりに見て、考えて、行動する事が大切だ」と、ゴンダールを含め、エチオピアを旅して強く感じました。
 
P9042030

P9040143

そして旅していてもう一つよく考えるのが、”ぼったくり”について。

特にエチオピアは”ぼったくり”大国として旅人から敬遠されていますが、そもそも”ぼったくり”って何でしょう?

 

旅行者からぼったくるのは当たり前?

よくある話ですが、途上国では本当によくボラれます。
もちろん数日その国にいれば物価はすぐに分かるのでボラレる事はなくなりますが、少なくとも売り手側は必ず相場よりも高い金額を請求してきます。

例えばエジプトやインドはぼったくりがひどい国だと感じる。
お土産屋さんやタクシー、バスがふっかけてくるのは当たり前。
レストランでも、観光客がアラビア語が読めないのを良いことにアラビア語メニューと英語メニューで値段が違う店があったり。

なんで旅行者をだますような事をするんだろう?と、それらの国々を旅行していて不満に思う事が何度もありました。
 

でもエチオピアに入ってから、この”ぼったくり”について違和感を感じる事が増えて来ました。

旅行者がよく言う”ぼったくり”という言葉。
それは、外国人というのを理由に地元の人よりも高い値段で売りつける行為の事をさすと思います。
だから、途上国を旅していてちょっとバスの値段が地元の人よりも高いと、「またぼったくられた!」「ここは酷い国だ!」という表現がされています。
旅仲間同士で話していても、「あの国はぼったくりが酷い!」とか「ぼったくる人ばかりで嫌になる!」という話はよく聞きます。
 

—–

でもこの”ぼったくり”という言葉が最近しっくりきません。

だって”ぼったくり”って凄くネガティブな言葉。
「悪意を持って人をだまして金を得る」みたいなニュアンスを感じる。

でも本当に彼ら途上国の人間は悪意を持って私たちに接しているのでしょうか?
 

もちろん私たちもぼったくられたくはない。
でも、「ぼったくりの何が悪いの?」と現地の人に言われたら返す言葉はありません。

「正規料金を知らない旅行者からたくさんお金を取るなんてずるい」
本当にそうだろうか?

だって相手は圧倒的に私よりも貧しい。
私たちはちょっとぐらい多く払ったって、その日のパンがなくなる訳じゃない。

その日暮らしをしている彼らからすれば、ちょっとでも稼ぎたいのは当然だし、実際ぼったくりをしている人の方がしていない人よりも儲かっているだろうから、ただの商売上手と見ることだってできる。

何だってできるだけ高く売りたい。高く売れる人には高く売る。
当たり前のこと。
家族のため。
殆どのケースでは別に騙してる訳でもない。
そもそも値段なんてあってないようなもの。

そう気づいてからは、ぼったくられても以前ほど悔しくなくなった。
このお金でこの辺りの人は少しだけ豊かになったな、そう考えるようになった。

毎日の食事すら危ういぐらい貧しい人が、生活に困っていなくてお金に余裕がある私たち旅人からぼったくるのが、果たして悪いことと言えるか。5年前にインドを旅していたときに一番考えさせられたことです。
 

—–

「旅行者からたくさんお金を取るなんてずるい!」という人もいるけど、払いたくなければそのサービスを利用しなければいいだけ。

「現地人と同じ価格で旅したい。お金がないから。」と言うのは完全に旅行者の勝手な都合であって、売り手からしたらそんな事は関係ありません。

現地人と同じ価格でバスに乗れることもあれば、倍の価格で乗らなければいけない事もある。日本と違って料金が売り手と買い手の間の合意によって決定される国々では、旅をする人の交渉力次第で価格が変わってくるのは当然の事。

逆に現地人の視点から見てみると、”ぼったくる人”と”ぼったくらない人”がいて、それぞれの方法で生活をしようと頑張っている。
でもどっちの方が儲かるかを考えたら、確実に”ぼったくる人”だ。
彼らの方がうまく立ち回り、どんどん生活を豊かにしていっている。

ぼったくりだって、生活するための知恵。
一概に否定する事はできません。

でも、正直者が儲からない世の中なのかな、と思うとちょっと悲しくなります。
 

日本ではぼられない。は本当か?

あとは、「日本ではぼられないのに!」と言う人もいるけど、それは違う。

旅人がよく言う「他の人よりも高い値段で物を売りつける」事をぼったくりと言うのなら、日本だってぼったくりだらけだ。

例えば私たちがよく使う一眼レフカメラ。
このカメラをメーカーがを売るときだって、家電量販店への卸値は商談で決まる。家電量販店は、”うちは◯個買うから安くして”とか、”そんなに高値にするならその商品はうちの店には置かないよ”とか、あの手この手で値下げ交渉する。

家電量販店で個人が商品を買うときでも、値札通り買う人もいれば、もっと安く買う人もいる。
売る方も、”この人は金持ちそうだからこれ以上は値下げしない”とか、”今の値段で本気で悩んでいそうだからもうちょっとだけ値下げしたら買うだろう”とか、人を見て判断してる。

みんなに同じ物を同じ値段で売ってる訳じゃない。

他にもちょっと考えてみたら例はいくらでも出てくる。
 

買い手が値段に納得すれば買うし、納得しなければ買わない。ただそれだけ。
 

—–

だから、私たちは旅人が言ういわゆる”ぼったくり”を悪いことだとは思っていません。

地元の人と同じ値段で買いたいのは、長く旅したい、節約したいという自分勝手な都合と、ちょっとしたプライドだけ。

私たちはエチオピアでそれに気付いてから、途上国の人たちとより深く関われるようになってきました。
 

 


これまでは自分たちの中にずっと迷いがあったから、物乞いやぼったくりに出会った時の態度を決めきれませんでした。

だから何かある度にいつも気持ちが揺らぎ、罪悪感を覚えたり、悲しくなったりしていました。

それも旅の醍醐味のひとつだとか言って何も考えずに放置しておく事もできましたが、この優しいゴンダールの街で自分たちの感じた事と考えを、この機会にきっちり書いておこうと思いました。
 

エチオピアでは貧しい人や身体の不自由な人が本当に多く、毎日考えさせられる事ばかりです。

今でもまだ答えがはっきり出せていない所もありますが、これからもひとつひとつ考えながら旅を続けていこうと思います。
 



Facebookで最新の更新情報をお届けしています。
「いいね!」ボタンを押してフォローしてね◎